2014.05.26

事業化までの道のり:サイザーセット(OZAKI VRec サイザー™/OZAKI VRecS™) ~大動脈弁再建(形成)術~

■自己心膜を使用した大動脈弁再建(弁形成)術
大動脈弁再建術は大動脈弁狭窄症や大動脈弁閉鎖不全症に対する新しい手術法です。自己心膜切除後、心膜をグルタールアルデハイド溶液(膜を安定化させる溶液)にて10分間処理します。元々の弁を切除し、周辺組織の石灰化を取り除くなどの処理をした後、OZAKI VRec弁尖サイザー™にて各交連部(元々弁がついていた根元の部分)間の距離を計測します。その計測値に対応した大きさの弁尖をサイザーに対応したテンプレートを使用して、弁の形にします。最後に作製した新しい弁を弁輪に直接縫いつけていきます。


■弁尖サイザー・テンプレート「OZAKI VRecS™」のご紹介
弁尖サイザー・テンプレート「OZAKI VRecS™」は、「自己心膜による大動脈弁再建(弁形成)術」において、石灰化した弁尖及び弁輪の切除・除去後に行われる各交連部間の距離の計測(弁尖サイザーを使用:動画1 18~37秒)及び計測値に対応した弁尖の作製(弁尖テンプレートを使用:動画1 38~52秒)に利用されております。


■事業化までの道のり
約7年前、東邦大学医療センター大橋病院/心臓血管外科/尾崎重之教授が心臓弁膜症の手術で、世界で初めて自己心膜を用いた大動脈弁再建術(尾崎法)を実施しました。生体との適合性の良さ、経済的な負担の低さ、手術後生活上の簡便さ、といったメリットがあり、今、この手術法は世界から注目されるようになり、尾崎教授もスーパードクターとして、世界各国で本手術法についての講演や手術法のデモンストレーションなどを行っています。

これまで、大動脈弁疾患(狭窄・閉鎖不全)に対する侵襲的治療は、機械弁または生体弁を用いた開胸人工弁置換術などの大動脈弁置換術が標準治療でした。しかし、機械弁・生体弁などの人工弁は高額であり、医療財政に負担となっています。また、生体弁においては、耐久性の問題も指摘されてきました。これに対し、自己心膜を利用した尾崎先生の大動脈弁形成術は、心臓生理学の観点から、大動脈基部の拡張・収縮を阻害せず、このため長期の有効性・安全性に優れている可能性があります。また、人工弁を使用しないため、費用対効果が絶大であると考えられております。本術式に感銘を受けた弊社代表取締役の内田は、循環器内科専門医の立場からみても、この手術が優れていると感じ、「自己心膜を利用した大動脈弁再建術」を大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症の標準術式として世界に広げるために、手術に必要なサイザーセット(弁尖サイザー・テンプレート)の量産に向けた開発協力を2012年 自ら尾崎教授に申し出ました。

当初は、とある町工場で製作されていたサイザーセットのプロトタイプを医師の才量の範疇で使用していましたが、弊社では世界各国での薬事規制に適合させるために必要な改良を加え、サイザーセットを本格的に事業化すべく、開発に着手致しました。まず、2013年ふくしま医療福祉機器開発事業費補助事業に応募し、計画名「革新的な大動脈弁形成術(※)を補助する弁尖サイザー・テンプレートの開発・製品化(※2014年度申請時は大動脈弁形成術を学術的理由により大動脈弁再建術に変更)」として採択されました。その後事業は順調に進められ、ClassⅠの医療機器として届出が米国食品医薬局(FDA)ならびに独立行政法人医薬品医療機器開発機構(PMDA)に受理されました。(PMDA:2014年3月28日、FDA:2014年4月1日届出済)
今後は引き続き研究開発を進め量産化を目指すと共に、2014年度中にその他の国々での販売承認取得を目標とし、世界に本術式を広めるべく事業を進めてまいります。

■メディア掲載 等
2013年10月 ・・・ EACTSの学会誌にて特集が組まれました。
2014年2月   ・・・ ワールドビジネスサテライト[テレビ東京]にて取り上げられました。
2014年8月  ・・・ 朝日新聞にて取り上げられました。
2014年10月 ・・・ 第67回日本胸部外科学会定期学術集会にて大動脈弁再建術に関するランチョンセミナーが開催されました。
2015年1月  ・・・ 韓国における第1例目が成功致しました。