2018.05.24

中小規模の会社の医療機器の海外展開について

こんにちは、事業開発部の蛭田(ひるた)です。

私はJOMDDにおけるAVNeoサイザー事業の国内・海外展開を担当していますが、この製品の売上のほとんどは海外で、これまでに40カ国弱の国への販売代理店契約をしています(2018年4月末時点)。 この海外事業における経験を踏まえ、今日は「医療機器の海外展開の基本」について私見を交えお話ししたいと思いますので、どうぞお付き合いください!

さてまずは、良く耳にされる話しかと思いますが、「海外展開」のメリットについて、整理したいと思います。

海外展開のメリット

1. 医療機器において、日本国内の市場規模はそもそもそんなに大きくない
世界の医療機器市場に目を向けると、日本が第2位であるものの、その規模は世界シェアで7%程度。つまりは93%の市場は海外にあるということです。

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また成長率で見ると、人口減が叫ばれている日本国内でも市場規模が伸びていますが、新興国ではさらに飛躍的な市場の伸長が見られます。特にブラジル、東南アジア、中国の市場規模の伸長は顕著で、2014年から2019年までの平均の市場成長率が10%を超すと見込まれています。※1
このような国の医療機器市場は、競争が激化していない領域も多く、今後の成長率を考えても大きな魅力を持っています。

2. 巨大マーケットを狙わなければ、2nd entryで急成長できるチャンスがある
これはタイミングや取り扱い製品によりますが、一概に最も早く市場に参入する1st entryが良いと限らないのが医療機器の業界ではないかと個人的には考えています。新しい技術や新しい製品は必ずエンドユーザー(医療従事者)に対して「教育」という大きなハードルを乗り越えなければならない。潤沢な資金を持つ企業は1st entryにより市場を独占しようとしますが、そのような資金を持つ会社は限られています。資金が限られていて、最大効率化しようとする会社にとって、意外とちょうど良いのが2nd-3rd entryくらいだと思います。先駆けて発売されている製品に比べ、わずかに良ければ、市場にとって分かりやすいメッセージが伝えられて、食い込んでいくチャンスは往々にあります、「先生、先行して発売した○○社の製品より10%良いです、さらに同じ値段です」という具合に、先行品と比較することで完結にメッセージが伝えられるのです。
特に新興国では、2nd-3rd entryの製品がまだ進出されていない領域が多く、良い製品を限られたリソースの中で拡大させるのに適ししていると感じています。


次に海外展開において、注意をしなければならない点について幾つか記しておきたいと思います。

海外展開の注意点

1.適切なパートナーを選ぶ (パートナー選びの基準は?)
自社で海外展開をするに越したことは無いことは自明の理ですが、やはり自社で展開にすることに当たっては高コスト、ハイリスクなど考慮すべきことは多々あります。海外においてリスクヘッジをしながら、慎重かつ素早く展開をするためには、やはり現地パートナー企業と提携することが望ましいと考えます。
しかし、パートナーは慎重に選ぶ必要があります。弊社でも大事にしている幾つかの基準を列挙します。

・信頼がおけるのか?
もっとも大事な点です。この会社(人)であれば任せられる、と感じるまでコミュニケーションを取り続けることが、適切なパートナー選びにおける近道だと思います。そのためには何回も電話してください。出来れば直接会って話しましょう。その中で、
-小さな依頼事項も期日までに対応してくれるか?
-発言に一貫性があるか?
-現地の市場に精通しているか?
などコミュニケーションの内容を確認してみてください。ファーストインプレッションに引っ張られ過ぎず、冷静に判断をすることが大切です。

・既存製品とのシナジーがあるか?
一番良いシナジーは自社の展開したい領域において、同じ製品を持っているが、直接な競争にはならないポートフォリオを有している会社です。そのような会社とは販売上のシナジーが得られ、より積極的な展開をしてくれることでしょう。もし、自社製品と先方の製品が競合品となる場合は積極的な展開を現地パートナーには見込めません。先方が独占権を獲得してしまえば、「競争となりえる製品をPRせずに、そのまま塩漬けして、自社にとって不利な競争を避けられる」と考える輩がいる可能性すらあります。
他方、先方がまったく違う製品群を有している場合は、現地に期待したいコネクションや現場の商慣習に明るくないため、パートナーとして適しているとは言えないわけです。

・適した企業規模であるのか?
パートナーが大きければ良い、という訳ではありません。大きいパートナーは多くの製品を有していたり、もしくは既に既存の製品の勝ちパターンで出来上がっているなど、自社製品の入り込む余地がないネガティブなパターンは幾つかあると思います。

・自社製品を販売するメリットがパートナー企業にあるか?
当たり前のことですが、パートナー候補のメリットを考える必要があります。パートナーにとって「利益幅は十分確保できているか?」「将来的な利益を生むことが出来るのか?」など、パートナーがきちんとアクセルを踏んで自社製品を販売できる情報を提供出来れば、きっと良い関係を築けることでしょう。

2.正しい戦略を作る
さて、新しい市場に参入するにあたって、戦略を描かずに参入する会社はいないと思います。ここで強調しておきたいのが、正しい戦略を作る、選ぶことです。一般的に日本で成功した戦略をそのまま現地で展開するという紋切り型で画一的なグローバルストラテジーやマーケティングは成功しません。現地のニーズを考えていくと戦略は自ずと見えてくるかと思います。
ここで間違えて頂きたくないのが、製品コアコンピテンシーはどの国でも変わらないということです。例えば「最も痛みが少ない○○製品」などのようにコアとなるバリューはどの国に参入するにしても、変わりません。変わるのはそれを届けるための戦略だけです。

3.適切なメッセージングを設定し、それを現地パートナーに辛抱強く伝えていく
現地パートナーには、自社が発信したいメッセージを代弁して頂く必要があります。現地に合わせた多少の変更はあるかと思いますが、コアとなるメッセージはどの国であっても大きく変わりません。
しかしパワーポイントなどでパートナーに説明しただけではなかなか理解を得られないことと思います。辛抱強く、「我々の製品についての大事なメッセージは○○です」と何回にも渡って伝えていき、理解をして貰うことが大事なことです。

4.現地マーケットに適合していく
日本人と外国人とでは体質、体格、文化などが違うこともあり、one fits allは中々難しいことがあり、同時に各地域において、ニーズが微妙に異なることもあるかと思います。それらの状況に柔軟にアジャストしていくことは好ましい場合があります。鍵となる宣伝材料に使うイメージ写真が文化により受け取られ方が大きく違うことがあるのもその一例です。外資のグローバル企業が本社が作成した宣伝材料をそのまま国内で採用した際、日本人の目から見ると違和感があるという経験は皆さんもお持ちかもしれません。

5.薬機規制(クラス分類等)の違いを考慮する
医療機器のクラス分類において、各国が定める基準が一律ではないことが皆様ご存知の通りだと思います。例えば、日本においては低クラス区分の医療機器が別の国ではより高いクラスに分類されて、各種試験を求められる可能性があります。逆に日本で高いクラス分類でも、海外だと逆に低くチャンスがあることがあるかもしれません。
機能性や製品プロフィールが近しい製品が既に存在するのであれば、それらの製品を確認しておくことが重要です。



以上のように述べてきましたが、海外展開は魅力あふれる新しい市場、大きな市場へのステップであることは従前からご理解をされているかと思います。しかしそのためには様々なステップや壁を乗り越えて行かなければなりません。我々JOMDDでも海外展開をしている製品はあり、既に39 ヶ国以上への販売経路を確保しております。
我々はそのような自社展開のハンズオンの経験を生かし、海外展開におけるアドバイスに限らず様々なパートナーシップの形態を通じて、世界へ羽ばたくためのアクションをご一緒することが出来ます。特許戦略や薬事など、医療機器の海外展開にはマーケティング以外にも考慮すべき観点が多々あります。海外展開においてサポートなどが必要であれば、いつでもお気軽にJOMDDにご相談ください。手前味噌ですが、知財戦略から実際の販売までの多くの経験を有する人材がチームに揃っております。



【参考資料】
1 日本貿易振興機構(JETRO)2016年12月7日「世界の医療機器市場の最新動向」
http://www.chubu.meti.go.jp/b23healthcare/161213/20161207messe-seminar2.pdf p.8
(最終アクセス2018年4月10日)