2017.09.08

現地レポート:シリコンバレー近郊の医療機器関連カンファレンス

みなさん、こんにちは。JOMDDシリコンバレーオフィスの上島です。
弊社がシリコンバレーオフィスを開設してからお蔭様で半年が経ち、順調に現地でのネットワークを広げております。日本ではまだ残暑が厳しいかと思われますが、シリコンバレーの夏は、日中30度近くまで上昇しますが湿度が低く、夜は15度くらいまで気温が下がるため、東京に比べると過ごしやすいです。

さて、今回はシリコンバレー近郊で行われた医療機器関連のカンファレンスについての現地レポートをお届けしたいと思います。

6月2日にサンフランシスコ市内で行われたWilson Sonsini Goodrich & Rosati (WSGR)が主催するAnnual Medical Device Conferenceは、今年で25回目の開催となり、多くの関係者が一同に会するとても人気の高いカンファレンスです。今年も600人以上の参加者があり、大手医療機器メーカーのエグゼクティブ、スタートアップ、ベンチャーキャピタル、コンサルタント、金融機関と多岐にわたる参加者がありました。カンファレンスではMedtechスタートアップが直面する課題について様々な角度から検証・問題共有して解決策について議論されました。また、事前に参加者名簿を見てオンラインで個別面談の設定もでき、1日で市場の動向、資金調達先や出資先を探すのには、費用対効果が高いカンファレンスの一つです。ちなみに、今年度の一般参加費は$350でした。

パネルセッションも多数あります。1日で16テーマに分けて欧米・アジアでの動向が議論されるため、参加者は各々興味のあるテーマを探して参加する形となります。私が特に興味をもったパネルセッションについて、ご紹介させていただきます。
『Pacific Rim Deals with U.S. Medtech』というテーマで、オーストラリア、中国、台湾、日本と強いパイプラインを持っている4社のVC幹部が登壇し、米国内の資金調達状況および今後の動向について議論しました。昨今、医療機器向けVCファンドは、US国内での資金調達が厳しくなってきており、Pacific Rim(環太平洋地域)からの資金調達が増えてきています。またこのトレンドは当面続くと見ており、北米スタートアップ企業にとってもPacific Rimとの関係構築は重要な成功要素となると言及されていました。またUS内での資金調達が難しくなっているため、買い手市場となっている模様です。US内での資金調達が難しくなっている背景としては、様々な見方があると思いますが、投資家はリターンまでの道のりが長い医療機器と比較して、初期投資も小さく抑えられ比較的短期的なリターンが期待できるDigital Health系分野への出資に流れているのではと推察しております。
こうした観点より近年のBiopharmaと医療機器へのUS VC出資トレンドを見てみると(表1、表2)、Biopharmaへの出資は比較的高い水準で推移している一方で、医療機器への出資は減少傾向です。また、医療機器に対する出資案件数も2015年対比で13%ほど下がっていることが見受けられます。

表1;BiopharmaおよびMedical DeviceへのVC投資比率

表1

出典;Silicon Valley Bank, “Trends in Healthcare Investments and Exits 2017”

表2;US医療機器への投資傾向

表2

出典;Silicon Valley Bank, “Trends in Healthcare Investments and Exits 2017”

さらに、近年のDigital Health系への投資額傾向(表3)を見てもわかる通り、2016年には約$8Billion(約9千億円)もの資金が投入されており、全米VC投資額の約10%程度までに成長している事が見受けられます。またこの傾向は今後も続くと見ており、2020年に更なるピークを迎えると予想されています。主な領域別投資先(表4)では、患者・一般向けのサービス領域への出資比率が高い傾向にあります。

表3;近年のDigital Health系への投資額トレンド

表3

表4;主な領域別投資先(2016年)

表4

表3・表4 出典;© 2017 StartUp Health, LLC, Report “2016 Digital Health Funding Rankings”

一方で、Digital Health系スタートアップと言っても、シーズからシリーズAまでいくのは容易ではないですが、より患者・一般利用者対象とした分野が投資家を集め易い傾向にあり、2016年度の全体平均期間の約14カ月に対して、約1ヵ月早くシリーズAに到達しています。(表5参照)

図5;サービス・用途別シリーズAまでの到達期間

図5

出典;© 2017 StartUp Health, LLC, Report “2016 Digital Health Funding Rankings”

 

医療機器開発アイデアの中にDigital Healthの要素を含むことで、投資家を募り易くなる可能性もあるのではないでしょうか。

以上、US国内で医療機器スタートアップへの資金調達が難しくなっている状況で、多数の米国スタートアップやVCファンドがアジアからの出資を期待しており、これまで以上にオープンな形でパートナー探しをできる状況でもあると言えるかもしれませんね。

続いて、今回のカンファレンスの最後に行われた『MedTech Innovator 2017』について、少しご紹介します。『MedTech Innovator 2017』は、非営利団体MedTech Innovatorが主催するピッチコンテストで、昨今医療業界で重要課題とされている『Value Based Care』を牽引するようなスタートアップ企業を発掘することを目的としています。同社はこれらの企業を、メンタリングプログラムを通じて支援しています。今年度は世界26ヵ国、約600社の中から100社が1次審査を通過し、最終審査が行われる9月には50社のファイナリストから優勝者が決定し、なんと事業開発費用として使える$500K(約55百万円)の資金が貰えるそうです。カンファレンス内で行われた中間ピッチコンテストでは、選ばれた4社が登壇し、会場にいる参加者の投票で優勝者($25K副賞)が決定しました。今年度は、私も1票投じた腹腔鏡手術用デバイスを開発しているEximis Surgical社が選ばれました。ちなみに私がEximis社の製品に一票投じた理由は、昨今注目されている非侵襲、費用削減、患者へのメリットという課題をしっかり捉えて製品開発されている点です。
日本国内でも問題意識が高くなっている医療機器スタートアップを支援する土壌作りですが、米国内では様々な形で解決策を打ち出しており、このようなイベントが世界各地でどんどん増えて欲しいものですね。

s_WSGRカンファレンス (1)

(写真)WSGRカンファレンス

実は、弊社でも今年度初の試みになりますが、2017年11月5日(日)に東京・日本橋で、医療系ベンチャーピッチイベント(午前)および医療機器グローバルシンポジウム(午後)を開催する運びとなりました。

グローバル市場への挑戦を目指しておられる、医療機器、デジタルヘルス、ヘルスケアサービス、その他ヘルスケア領域で、新規事業・起業のアイデア・技術をお持ちの方がいらっしゃいましたら、これを機会にぜひご応募ください!

 

◆ピッチイベント
◆ピッチ登壇者:5社(5チーム)

◆応募内容:
・医療機器、デジタルヘルス、ヘルスケアサービス、その他ヘルスケア領域
・新規事業のアイデア・技術(特許出願が無いアイデアの状態でも応募可能)

◆応募資格:下記のいずれかに当てはまる企業、チーム、人物
1. 大学・研究機関等に在籍する学部生・大学院生、研究員、医師(研修医含む)
2. スタートアップ段階にあるベンチャー企業(起業前のチーム含む)
3. 企業における研究や新規事業のスピンアウトを考えている方
4. 社会人、学生等は不問

◆審査方法:
・事前審査:最終審査でピッチする登壇者選定ため、書類審査を実施します。結果は後日、応募者全員にご連絡いたします。

<申込先>medpitch2017@jomdd.com
(担当:JOMDD 石倉)
※応募締め切り:10/4(水)必着
※技術・アイデア・事業の概要を上記申込先メールアドレスまでE メールにてお送りください。フォーマットは問いません。

<問合せ先>id@jomdd.com
(担当:JOMDD 石倉)
※各種お問合せについては上記メールアドレスまでご連絡ください。

・最終審査:ピッチ形式で、審査員による審査を実施します。結果については、当日会場内にて発表します。
・審査員:

Babak Nemati
(Ph.D.Founder,President & CEO, Strategic Intelligence, Inc)
Elton Satusky
(Partner,Wilson Sonsini Goodrich & Rosati)
Kirk Zeller
(Managing Director U.S.and Co-Founder Asia MedMarket Access)
Peter Howard
(Senior Vice President,Triple Ring technologies)
池野 文昭
(Program Director(U.S.) Japan Biodesign,Stanford Biodesign Medical Director,Experimental Interventional Laboratory,Stanford University / MedVenture Partners株式会社取締役 チーフメディカルオフィサー)
内田 毅彦
(株式会社日本医療機器開発機構代表取締役CEO)

◆賞品:下記の1 or 2:優勝チームによる選択
1. 米国シリコンバレーのベンチャーキャピタル・インキュベーター・投資家を中心とした海外派遣プログラム( シリコンバレーツアー3泊 5日)参加のための渡航費(優勝チーム2 名分)
2. 最大1 億円まで株式会社日本医療機器開発機構が事業化費用を出資

 

◆タイムスケジュール:

09:00 ~ 開場開始
09:30 ~ 開始の挨拶
09:40 ~ Startup pitch (15 min) +
Q&A(5min)× 各5
11:20 ~ 各審査員による投票タイム(10 min)
11:30 ~ 各チームへのフィードバック+
採点結果(3 min × 6 名)
11:50 ~ 結果発表(10 min)

※上記イベントのHP

今後ともJOMDDシリコンバレーオフィスでは、日本発の革新的な医療機器を世界に出していくために、北米とアジアを結ぶ架け橋となれるよう少しでも貢献していきたいと考えておりますので、今後ともご支援・ご鞭撻のほど承りたく、何卒よろしくお願い致します。

出典リンク:
MEDICAL DEVICE CONFERENCE (最終アクセス 2017/7/30)
Medical Device Funding: Any Signs of Life? (最終アクセス 2017/8/5)
MedTech Innovator (最終アクセス 2017/8/1)
StartUp Health Insights™ Reports (最終アクセス 2017/8/5)